石川滋賀県人会
湖国の長栄座って! 岡田 稔
どこからともなく聞こえてくる、そして段々と大きくなるさざ波の、どどーまたどどー
ご存じの方もおありと思いますが、「長栄座」は明治16年(1883年)長浜市元浜町に創設された木造2階建ての800名を収容する大規模な劇場で、歌舞伎、落語、芝居など幅広く興行されていたとは!。平成23年(2011年)この会館のイベントホールに特設舞台を復活させ、今年で10周年との事。
演劇の今年のテーマは、「むすひ」です。交通の要衝である米原に東西から第一線の奏者・演者が集い、同じ舞台に次世代を担う子どもたちも立って様々な舞台芸術がつながり、「長栄座」を全国に発信することで、人や地域が結ばれることを願っているとのメッセージ。
ところが、翌日パンフレットをよく見ると、その舞台の構成・演出企画は、いしかわ・金沢風とみどりの楽都音楽祭での能舞とクラシックの演出家である中村豊氏とあり、驚きと今更ながら親しみを感じました。
それによると中村氏は、構成をどうするか相当に悩まれ、昨年9月に金沢から電車と船で竹生島を詣でてから考えることにして始まりました。これがご縁で、「響鳴〜日本三大弁財天と宇賀神将十五王子〜」の着想となり、三年がかりで完成するという壮大な新作を企画されました。
弁財天は、芸能の神として祀られており、今回の作品には更に十五王子を加えてのもので今までにはない縁起物語とのこと、そして初年の今年は「江の島」、来年は「厳島」そして再来年が「竹生島」と企画され、インドの神である弁財天の降臨を表現し、インドの楽器シタール、タブラーを加え、舞の面では、宝生流の謡曲、能囃子、コンテンポラリーダンスと多彩な舞台を作られました。
長栄座を一年に一度引き出す御神輿のような祭りにしようと名付けて「邦楽アラカルト 湖国神在祭 むすひの芸能撰」とされました。
それとは露知らず、当日プログラムを見て、加賀宝生の渡邊荀之介、三弦弾き語りや十七弦奏者の竹澤悦子、洋舞の中村香耶(かぐや)は石川県金沢市、そしてフラダンスの美齢なダンサー9名はナ・レイ・プアラニ・フラ スタジオとはなんと野々市市ですわ。これにはびっくり!これだけ豪華キャストなら遠路高速割引がコロナ禍のため効かない中でも、来た甲斐があったというものです。帰り際、ダンサーと会話でき、美しかったですわ。また、忘れないうちに、当日受付で、私はこういう者ですと滋賀県人会の名刺を出してきましたし、喜んで頂きましたことをこの場をお借りして杉本会長に報告します。
さて、開演前の口上が長くなりましたが、簡潔にはいかない中、本番と今後の予定(大いに期待!)を概略紹介します。
2日間のプログラムは別添写真を見て頂き、想像以上に創造しながら思い巡らして下さい。
私は2日目でした。箏が奏でるハワイアン・フラとありますが、相性がしっくりこないのではと思いながら見聞きしていましたが、実に見事に合っており、ダンサーが野々市周辺のご婦人方というよりも、ハワイから呼んだのではというくらい綺麗で優雅さに感激!。箏とシタールによる舞曲ではインドの文化を思い起こさせました。落語では大津市(旧志賀町)出身の 桂 紅雀 による「矢橋船」で近江八景之図「矢橋帰帆」が舞台で、マスクなど無視して大笑い出来、新型コロナ免疫力が一層増したのは間違いないでしょう。
次の第2部は箏と三弦の弾き歌と児童合唱による「駅名連歌 まいばらはつ」で、米原〜京都まで20駅を謡い唄い歌いこなすという珍し楽し面白しメドレーソングです。その歌詞の一部を幾つかお伝えすると、彦根では「井伊家のご城下」、安土では「盛者必衰の理は信長公でも逆らえぬ」、近江八幡では「三法よしの その心意気 安南までも」、栗東では「パッパカパー パッパカパー ダービー制覇目指しては」、石山では「瀟湘八景 洞庭秋月 近江八景 石山秋月」、大津では「行き交う人の会者定離 知るも知らぬも逢坂の関」と歴史や名所旧跡を実に見事に織り込んであります。児童のみならず我々も学びとでした。
漸く第3部「響鳴〜日本三大弁財天と宇賀神将十五王子〜」となり、今回は「相模江ノ島 妙音弁財天と五王子」です。その物語を能、筝曲そしてコンテンポラリーダンスがコラボレーションするという多分、前代未聞の舞台でしたが、それ以前に異境の世界で鑑賞していた私には、わかったようなわからないようなそれでいて、何となく納得できるような不可思議に楽しく酔っていました。それでも、また来年の「厳島 弁財天」をさらに再来年の「竹生島 弁財天」を鑑賞する気になりました。ストーリーはスマホなどで検索して下さい。
こうして、3時間の素晴らしい、また来たいと思わせる「長栄座 伝承会 むすひ」は
出来ますれば、来年、再来年には、石川滋賀県人会の皆様と長栄座でお目にかかれますよう、それまで、新型コロナに負けず頑張り続けましょう。